東京高等裁判所 平成7年(行コ)145号 判決 1996年10月17日
東京都品川区東五反田一丁目一二番一〇号
控訴人
株式会社エスデイシイ
右代表者代表取締役
吉川忠佑
右訴訟代理人弁護士
寺本吉男
東京都港区高輪三丁目一三番二二号
被控訴人
品川税務署長 中村敏明
指定代理人
小尾仁
同
渡辺進
同
桑原秀年
同
浅川賢治
主文
一 本件控訴をいずれも棄却する。
二 控訴費用は、控訴人の負担とする。
事実
第一当事者の求める裁判
一 控訴人
1 原判決を取り消す。
2 渋谷税務署長が平成五年二月二六日付けで控訴人に対してした、
(一) 平成元年三月一日から平成二年二月二八日までの事業年度の法人税の更正のうち所得金額六四四一万九三三七円、納付すべき税額二一三四万五四〇〇円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定
(二) 平成二年三月一日から平成三年二月二八日までの事業年度の法人税の更正のうち所得金額五〇二一万〇一四七円、還付金の額に相当する税額六〇万九六八五円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定をいずれも取り消す。
3 被控訴人が平成五年五月三一日付けで控訴人に対してした、平成三年三月一日から平成四年二月二九日までの事業年度の法人税の更正のうち所得金額一三四一万一二三三円、還付金の額に相当する税額九〇六万四六八九円を超える部分、同事業年度の法人臨時特別税の更正のうち納付すべき税額五万〇七〇〇円を超える部分、同事業年度の消費税の更正のうち納付すべき税額四一五八万四〇〇〇円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定をいずれも取り消す。
4 訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。
二 被控訴人
控訴棄却
第二当事者の主張
原判決二一頁七行目の「また、」の次に「控訴人は、事前に税務相談を行ったうえで本件契約を締結しているのみならず、」を九行目の次に「なお、訴外会社から控訴人に対しては、高濱以外の社員も派遣されているのであるが、本件各更正が高濱の派遣料についてのみ寄付金に該当するとするのは、憲法三一条及び八四条に反して、このような法適用を生むとすれば、法人税三七条自体も憲法の右各条に反するものである。」をそれぞれ加えるほかは、原判決の事実欄「第二 当事者の主張」の記載のとおりであるから、これを引用する。
第三証拠
原審訴訟記録中の書証目録及び証人等目録並びに当審訴訟記録中の書証目録各記載のとおりであるから、これを引用する。
理由
一 当裁判所も控訴人の本件請求はいずれも理由がないものと判断する。その理由は、次のとおり改め、又は付加するほかは、原判決の理由説示のとおりであるから、これを引用する。
1 原判決二八頁六行目の「見当たらないのであって」の次に(なお、甲第八号証(控訴人の新株引受権証券)及び同第九号証(控訴人の無担保社債券)は、いずれも昭和五九年九月三日付のものであって、高濱が本件契約後に右業務を行ったことの証拠となるものではない。)」を加える。
2 同二九頁六行目及び八行目の「事実」をいずれも「実体があったこと」と改める。
3 同三一頁七行目の「原告は、」の次に「事前に税務相談に行ったうえで本件契約を締結したのみならず、」を、九行目の「主張しているが、」の次に「昭和六三年一二月ころ、東京国税局及び渋谷税務署に電話相談をしたとの前記甲第七号証の記載は、裏付けを欠くのみならず、控訴人の関連会社であるエレクトロニクス社が昭和六三年二月一日から平成元年一月三一日までの事業年度に法人税の確定申告において損金として派遣料二四〇〇万円を計上していること(成立に争いのない乙第六号証により認められる。)に照らすと、本件契約は、税務相談の結果にかかわりなく、締結されたと推認することができるうえ、」を加え、一〇行目の「事実」を「実体があったこと」と改める。
4 同三二頁一行目の次に行を改め、「さらに、控訴人は、訴外会社から高濱以外の者の派遣も受けているのに、高濱についてのみ派遣料を寄附金に該当するとするのは、憲法三一条及び八四条に反するなどと主張するが、高濱は訴外会社及び控訴人の代表取締役の地位にあった者であるのに対してそれ以外の者は右各社の代表取締役の地位にはなかったことが弁論の全趣旨によって認められるから、本件各更正が高濱以外の者の派遣料について寄附金に該当するとの積極的判断を行わなかったことをもって違憲であるとすることはできず、また、法人税法三七条の規定自体が違憲であるとの控訴人の右主張は採用し難い。」
を加える。
二 よって、控訴人の請求はいずれも理由がなく、これと同旨の原判決は正当であって、本件控訴はいずれも理由がないから棄却することとし、控訴費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 小川英明 裁判官 太田幸夫 裁判官 下田文男)